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【特集記事】AMAMI TERRACE
見習いR.O.
日本第一の“赤穂の塩”。つくる文化を知る、体験する
Salt × Sea
語る人 赤穂化成株式会社マーケティング部 野中香映さん
瀬戸内海を見渡す伊和都比売神社。その境内に3月13日、体験型カフェスペース『AMAMI TERRACE』がオープンした。「日本第一」と称された赤穂の塩や、日本遺産にも認定されている伝統的な塩づくりに興味をもってもらおう!と、塩でうま味を引き出したランチやスイーツを提供。季節に応じて塩や味噌、豆腐づくりのワークショップも開催し、作り手の想いやストーリーを伝えていく。
知っているようで知らない「塩」を新しいカタチで体感
特に意識もせず、家にあるものをなんとなく使っている「塩」。「塩」と一言でいっても種類は様々。製法によっても味や成分がかなり違ってくる。
「昔は自然塩と呼ばれる、にがり入りの塩がいいとおっしゃる人が多かったのですが、現代では塩と表記されていれば何でもいいという人や、塩に味の違いがあることを知らない若い人が増えてきました。そこで赤穂の伝統製法の塩をちょっと意識して味わっていただくことで、ファンになってもらえるような活動ができないかと、カフェ&ワークショップ一体型のアンテナショップを立ち上げたんです」と話す、赤穂化成の野中香映さん。
『AMAMI TERRACE』を運営する赤穂化成は、看板商品の「赤穂の天塩(あましお)」や「天塩(あまみ)の塩」をはじめ、「にがり」や「海洋深層水製品」などを販売する無機ミネラルの総合メーカー。赤穂伝統の製塩技術を受け継ぎ、進化させながら、様々な商品を開発。モノづくりだけでなく、赤穂が大事にしてきた海の恵みを普及させるべく、体験の場やノウハウの提供など、コトづくりにも力を入れている。
瀬戸内海を望む、伊和都比売神社の境内にオープン
お店のなかからも神社の鳥居が見える
赤穂の塩のブランディングや価値創造に尽力する、赤穂化成株式会社の野中香映さん。笑顔が素敵な子育てと仕事を両立する「バリキャリママ」
土日祝日限定で楽しめるランチでは『豆腐煮込みハンバーグランチ1,300円』が人気。スパイシーな塩胡椒が豆腐と肉の風味をくっきり立たせ、うま味がアップ!
『苺パフェ1,300円(季節限定)』。塩キャラメルクルミや塩クッキーなど、塩でうま味を引き出した甘じょっぱいスイーツが口の肥えた大人を魅了
日本第一、赤穂の塩物語
赤穂で塩業が発展したのは、雨が少ない温暖な気候に加え、千種川が運ぶ良質の砂でできた広大な干潟、瀬戸内特有の干満差といった塩づくりに良好な環境条件が重なっていたことが大きい。弥生時代から塩づくりの歴史を持つ赤穂では、江戸時代にこれら自然環境を活用した入浜式塩田という製塩法を開発する。当時の蘭学者、司馬江漢が『赤穂塩、日本第一なり』と著書に記す通り、赤穂は質・量とも国内きっての塩産地として知られるようになった。
「塩のまちとして知られる赤穂ですが、実はまちの東西で味わいの異なる塩をつくっていたんですよ」と教えてくれた野中さん。かつて赤穂では千種川をはさんで東西に塩田があり、東浜塩田は差塩(さしじお)を、西浜塩田は真塩(ましお)を生産していた。差塩はにがり成分が多く、まろやかな味わい。一方の真塩は長時間寝かしてにがり成分を減らした分、塩分が高いシャープな味わいを特徴とする。差塩は関東を中心に北国で好まれ、真塩は関西へと運ばれていた。
1971年、政府が塩田での製塩を廃止し、にがりを含んだ塩が市場から消えてしまう。そんな中、日本の伝統的な塩を取り戻そうとする市民によって運動が起こり、多大な努力の結果、天日塩とにがりを原料とする差塩が復活。それが現在、赤穂化成でつくられている『赤穂の天塩』のルーツとなっている。
『AMAMI TERRACE』の一角では、同社の塩や調味料を購入できるコーナーを用意。赤穂の先人達の努力の結晶が海から塩の結晶を再び取り戻したストーリー。そんな物語を添えてお土産を渡せば、味わいもぐんと深くなりそうだ。
赤穂の天塩 プレミアム200g810円。美しいパッケージ入りでお土産として人気
赤穂東浜塩田の伝統を継承した、にがり入りの塩や調味料を販売
赤穂浪士のデザインが印象的な塩も
塩業に携わる女性達が副業として発達させてきた赤穂緞通(あこうだんつう)や地元在住の工芸作家による皿やトレーも展示
美味しい塩は、ほんのり甘い?
にがりを豊富に含む差塩は、一般的な精製塩と違って味が“甘い”と言われている。塩が甘いって、どういうことだろう?
「しょっぱさにかどがない、まろやかで優しい味わいです。にがりには塩に天然のうま味をプラスしてくれる働きがあり、そのため漬物や味噌をつくるときは、にがりが含まれている塩の方がおいしく感じられます。私のおすすめは塩むすびです。塩のうま味の強さが米のうま味を引き上げ、そこに海水が持つ複雑なうま味も加わって、噛みしめるほどに深い美味しさを感じます。例えるならば、白砂糖と黒糖の違いがわかりやすいかも。精製されている白砂糖と違い、黒糖には砂糖の成分以外のうま味があります。それが味に深みや奥行きを醸し出すんです」。
にがりの主成分であるマグネシウムは健康の維持・増進に有効であるともに、料理におけるうま味の調整、発酵熟成など様々な働きをもっていると、野中さんはその優秀さを力説する。
「ワカメや大豆にもマグネシウムは含まれていますが、ほんの僅か。ワカメや大豆でマグネシウムを補給するには、たくさんの量を食べる必要があります。だからマグネシウム補給に関しては、にがりが一番コスパがいいと思います。水で薄めて飲んだり、ごはんを炊くときに少し入れたりしてぜひお試しいただきたいですね。当店のランチのご飯も、にがりを加えて炊いているのでふっくら艶々、美味しい!と好評ですよ」。
ふわっ、かりっ、粒形やミネラル成分が異なる塩をひとつひとつテイスティングできる
舐め比べて違いにびっくり。粒が大きいとゆっくり溶けるのでまろやかに感じ、粒が小さいとすぐ溶けるため塩味を強く感じる
ミネラル量の硬度の違いを比較できる「水の味くらべ」コーナーも。水に味があることを実感!
う、旨い! 学びと発見のあるワークショップ
店内では季節に応じて様々なワークショップを実施している。海水の塩分を濃くした、かん水を煮詰める塩作り体験では、結晶のカタチや水分量によって塩の味が異なることを実感できる。
ほかにも塩を使った豆腐作りや味噌作りなども平日限定で開催していく予定。月2回程度、水・木・金曜の10時~14時に、スイーツ・ドリンク付きのスペシャルランチとセットになったワークショップを開催している(要予約、4,000円~)。
「まずは塩に触れていただくことから始めたいと思っています。少し塩を足すことで、食材や料理のうま味がぐんと引き立ちます。ワークショップや見学の体験を通して、実感いただければ嬉しいですね」。
土鍋に濃度の高い海水(かんすい)を入れ、赤穂の塩づくりを体験
店内の平釜でのデモンストレーションも。赤穂化成のスタッフさんが塩を炊き上げる。出来たてのクラフトソルトは購入可能
天と海でつながる、伊和都比売神社とのご縁
店がある一帯は、江戸時代には東浜塩田があった場所。塩田で塩づくりをしていた人達が組合をつくり、それが後の赤穂化成となった歴史があり、伊和都比売神社は東浜塩業組合の氏神様にあたる。
「当社の社長や先代の社長は氏神様を信仰する氏子でした。ここには神社のお茶屋があったのですが、店主さんが山間へ移転をされて場所が空いたことから当社がお店を開業することになりました」と、野中さんは縁がある場所にオープンできた喜びを語る。
塩を運ぶ船の航海安全で知られる伊和都比売神社。同神社の鳥居に「天海(あまみ)」という同社の商品名と同じ読みの文字が刻まれていたことにちなみ、店名を『AMAMI TERRACE』にしたという。
「物語が伝わることで、食べたり、楽しんだりすることの喜びや感動も変わってくると思います」と野中さん。
塩づくりのストーリーを知ったり、モノができるプロセスを学び、体験したりすることは、新しい視点や発見を与えてくれる。作る人への尊敬の念が生まれるきっかけにもなるだろう。
『海で暮らしを豊かに』と願う作り手の想いを生活者に伝えていくことが役目という『AMAMI TERRACE』で、海の恩恵の奥深さを知るほどに、塩がもっと愛おしくなってくるはずだ。
航海安全や大漁祈願、縁結びなどの厚い信仰を受ける伊和都比売神社
もとは海上の大園(灯台の位置)と呼ばれる岩の上に祀られていたが、天和3年、浅野長矩が今の場所に移したとされる
航海の無事を願い「連天海路平無浪」と彫刻された鳥居の言葉を書にして店内でも紹介している
赤穂御崎の先端に位置し、夕刻の絶景は息をのむ美しさ
Sustainable
限りある地球資源をサステナブル
太陽と風の力だけで濃縮させて自然結晶させた“天日塩”。「赤穂の天塩」はその天日塩を原料とし、大量の電力を使用しボイラーで海水を煮詰める製塩方法とは一線を画す、低炭素な塩づくり。CO2の発生が非常に少なく、クリーンで環境にやさしい製法にこだわる。
また海洋深層水から脱塩した塩は塩製品、水部分はミネラル成分を調整して海洋深層水飲料、加工の過程で出来るにがりも商品に活用と、資源を決して無駄にしない。にがりは豆腐の凝固剤としての研究を重ね、全国の豆腐店に技術を提供している。
SDGsな取り組みで、日本伝統の味わいや食文化をさらに深く、新しくする提案で社会に貢献する。
『赤穂の天塩』はオーストラリアの海水を自然の力で塩田濃縮した“天日塩”が原料
すべては海水から。製塩技術を発展させて、高品質な暮らしを提案
基本データ
●AMAMI TERRACE
兵庫県赤穂市御崎2-1
0791-42-4140
Webサイト:https://web.ako-kasei.co.jp/amamiterrace/
10:00~17:00(LO16:00) 、ランチの提供は土・日・祝の11:30~14:00のみ
月曜・火曜定休※祝日の場合は翌日休業
ランチメニュー、カレー、フレンチトーストなど自社商品を使ったメニューや塩と相性の良いサツマイモスイーツ等を提供
見習いR.O.
若輩者ですが、頑張ります👍