グルメなあなたに贈るキッチンバス料理体験
赤穂で触れる、日本の美しい風景と美食
「赤穂は特別な町。」
それがスペインからこの美しい小さな港町、赤穂を訪れた私の第一印象です。
兵庫県の南西部に位置する赤穂は、山と海に囲まれた小さな町です。木造家屋、石畳、苔むした木々、そしてお城跡。
この美しい町で数日間過ごしただけで、私はゆったりとした時間が流れるこの土地や心温かい人々に魅了されました。
塩にはじまり牡蠣、パン、お酒にいたるまで、この土地には自然の恵みに満ちた豊かな食文化があります。ロマンチックな海を眺めながら本格的なナポリピザを楽しんだり、板前お任せの割烹に舌鼓を打ったり・・。また赤穂では、瀬戸内の豊かな食材を使った本物のグルメを存分に楽しむことができます。
赤穂は一年中どの季節でも居心地の良い素敵な夜を過ごすことができる場所です。食通のあなたでも、きっと赤穂を気に入るにちがいありません。
赤穂で伝統ある塩づくりを体験!
塩は赤穂を代表する特産品の一つです。
赤穂の塩は江戸時代からその品質の高さで知られており、日本全国で高い評価を得てきました。現代でも赤穂は高品質の塩を作り続けており、その製塩の歴史が赤穂を特別なものにしています。
そういった背景を考えると、伝統的な塩づくり体験ができる赤穂市立海洋科学館・塩の国を訪れる価値は十分です。
塩釜は再現されたものですが、当時の本格的な塩づくりの工程を垣間見ることができて驚きの連続です。
料理で人をつなぐ旅に出る:キッチンバス体験
今回私が赤穂にきた目的の一つは、赤穂の塩を使って赤穂でしか体験できないクッキングトラベルを取材するためです。
その旅を叶える黄色いキッチンバスは赤穂の海が見渡せる場所に停まっていました。
キッチンバスに乗り込むと、バスの中で2人のシェフ、ナオとタマラが迎えてくれました。二人は異なる料理文化を持つ国、日本とフランスからそれぞれやってきた料理人です。
私はこの二人のシェフと赤穂で塩をつくり、赤穂の食材をキッチンバスで集めて回る素敵なクッキングトラベルに出ました!
まず伝統的な塩づくりを体験した後、バスで地元の農家を訪れ、キャベツなどの新鮮な野菜を譲ってもらい、港では船に乗って牡蠣の養殖場を訪れ、牡蠣や地魚などの海産物をバスに持ち帰りました。そのとき地元の漁師から聞いた話は「誇りある伝統を次世代へと引き継ぐ情熱」を感じさせ、スペイン人の私にとって非常に興味深かったです。皆さんも、仲良くなって話を聞いてみてはいかがでしょう。
その後、私たちは1600年頃に創業した奥藤酒造を訪れ、日本酒と麹の醸造について学びました。夜の居酒屋で楽しめるお酒が作られる工程を見るのは非常に面白い体験です。さらにバスは進み、フランスでパン作りを学んだパン職人が出張販売をしている花岳寺へ行きました。そこで食べたパンは想像以上に美味しくて、日本で本場フランスの味を楽しめるなんて!と得した気分になりました。店舗も大人気ですが、お寺で食べる味も格別ですよ。
そうこうしている間にも、シェフの二人は行く先々で地域の特色に満ち溢れた特別なメニューを考えていました。
タマラとナオはキッチンバスで目的の食材を集め終わると、赤穂の海を見下ろせる絶景のキャンプ場でとても素敵なパーティを準備してくれました!赤穂で作った塩と赤穂で集めた食材を使った料理で、赤穂で出会った多くの親切な地元の人々に二人のシェフが料理を振る舞うためです。
自分たちで作った赤穂の塩、キッチンバスに乗って集めた地元の食材を使ってナオとタマラが技術と経験を活かして料理をしていると、招待した地元の人々がキッチンバスの周りに集まってきました。
赤穂で初めて知り合った人々が、二人の料理を食べてアコーディオンの音色に耳を傾けていると、年齢問わずうちとけた雰囲気になり、みんな心地良さそうに過ごしていて私も嬉しくなりました。赤穂の海に少しずつ沈んでいく夕日、なんとも言えない和やかな空気の中、このパーティは幕を閉じました。参加してくれた人々が挨拶を交わし満足そうに帰って行くのを見て、料理が人と人をつなぐことを改めて実感しました。そしてそれは赤穂の塩を使ったクッキングトラベルがもたらしてくれたということを潮風に吹かれながら考えてみたものです。
Summary
キッチンバスを使った赤穂のクッキングトラベルは、日本遺産や町の伝統を学びながら集めた食材をバスで料理をするという現代的で画期的なアプローチです。美味しい料理を味わう機会だけでなく、赤穂に息づく文化や伝統を余すことなく体験する機会を得ることができます。赤穂の塩づくり体験から牡蠣や新鮮な野菜、パンといった食材集めに至るまで私は忘れることができません。赤穂を訪れこの体験をした方はこう思うかもしれません。「ほんとうにありがとう、赤穂!」
About the Author
マルタ・エスピノーサ:スペイン出身のフードライター。日本に2年間在住している。(2020年現在)