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【特集記事】NPO法人赤穂里うみカヤックス
見習いR.O.
海抜ゼロから、心動かす風景と出会う
Sea kayaking × Sea
NPO法人赤穂里うみカヤックス
語る人 共同代表 山口晴康さん・清水隆雄さん 副代表 上山浩一さん
赤穂が誇る美しい海を、ただ眺めているだけなんてもったいない。もっと海に寄り添って、カラダ全身で感じられることを…。海抜ゼロを体感できるカヤックや、波音をBGMに行うビーチヨガなど、多様なマリンアクティビティで、海の素顔に近づいてみる。若い頃から赤穂の海で存分に遊びたおしてきたイケオジ(イケてるおじさん)達が、海の魅力の発信&保全に動き出す!
赤穂の海が大好きな人の縁がつながって
赤穂の海の魅力を最大限に活かした「マリンアクティビティ」や海の豊かさを学ぶ「里海体験」の場を提供するため、2021年6月より始動している「NPO法人赤穂里うみカヤックス」。現在、エコツーリズムを基本に、赤穂の自然を満喫する“非日常な時間”を提供できるよう準備を進めている。
メンバーは赤穂の海が大好きな10名。シーカヤックなどのマリンレジャーに携わってきた人を中心に、「赤穂の海のすばらしさをもっと知ってほしい!」という想いを同じくする人達が集って活動する。
代表の一人、清水隆雄さんは2010年に発足した前NPOにおいて、小学生を対象としたシュノーケリングや親子カヤック教室などに従事していた。好奇心旺盛な子供達にとって海はかけがえのない遊び場。自然の中で遊ぶことで学びや発見になる。ところが「危ないからダメ」と大人が制約を設け、子ども達の外遊びの機会が昔に比べて減っていることに気が付く。海辺のまち・赤穂に生まれ育っても、子ども達には海が遠く離れたものになってしまっている。
「自然と触れ合うことは子どもにとっても大人にとっても、欠かすことできない大切なこと。赤穂の海の楽しさや里海の大切さをもう一度、自分達なりに考え直して、その魅力を広く発信し、体験してもらえるカタチにしていきたいと思いました」と清水さん。
左から共同代表の清水隆雄さん、山口晴康さん、副代表の上山浩一さん。さまざまなアクティビティツアーを開催できるようインストラクター資格取得の特訓中 「危ないから近づかないではなく、海を正しく理解することで楽しく、有意義な時間を過ごせる。そのことをもっと皆に啓蒙していきたい」 「僕らは若い頃から海で遊んできたので海の楽しさをよく知っているけれど、それを思い出で終わらせてしまうのはもったいない。僕らが元気なうちに(笑)、若い人達に伝えていかなければ!」
カヤックやサーフィンのスペシャリストがメンバーに
同じく代表を務める山口晴康さんは17年近くカヤックに携わってきたベテランのカヤッカー。山口県から赤穂の唐船海岸まで、300km以上ある海を7日間、無補給で漕ぎぬける『瀬戸内カヤック横断隊』にも参加経験があり、全国のカヤック好きから一目置かれる存在だ。
「世界の海を知っている横断隊の仲間達が、『赤穂、いいやん。シーカヤックに最高やね』とベタ褒めしてくれたんです。当たり前すぎて気付かなかった赤穂の海の魅力を僕自身も再確認した。大阪や神戸から2時間ほどで到着する距離感ながら自然海岸が残っていて、点在する島も美しい。この環境を活かして何かやらない手はないなと。それでガソリンを使わず、人力で航海するカヤックは環境にもいいし、静かに漕ぐから鳥や魚を驚ろかせずに、間近で見ることができる。魅力満載のカヤックを、ふるさと赤穂で広めていきたいと考えたんです」。
副代表の上山浩一さんは、山口さんと若い頃からつるんで遊んでいた海遊びのプロフェッショナル。
「赤穂には海岸線に自然のままの砂浜が残っています。陸と海、両方の生態系の性質を持つ砂浜は、環境の視点からも遊びの視点からもとても貴重な財産。美しい景色を提供するとともに、遊びやレジャー、イベントの場として昔から利用されてきましたからね。赤穂に残る、海遊びできる自然環境を守りたいという気持ちがあります」と上山さん。
レジャーのみならず、自然と出会い、環境を考える機会も提供してくれる“カヤック”と“里海”。2つの言葉を合わせたNPO法人名を掲げ、今後、様々なマリン事業にトライしていくという。
ウィンドサーフィンやSUPもお手の物という上山さん。1987年、山口さんや上山さん達が唐船海岸でロックフェス&ウィンド大会を同時開催したことは知る人ぞ知る伝説 もともとあった海の家をメンバーの手で改修した『赤穂里うみカヤックス』のクラブハウス。艇庫としてカヤックを納めるほか、マリンアクティビティを楽しむ人の休憩場所としても活用 クラブハウスの一角に飾られたハワイのホクレア号の模型 人としての素性を取り戻すことを目的としたホクレア号。「ハワイも日本も同じ島国。カヤックや海を介して、島で暮らす恩恵を思い出し、人と人がつながる機会づくりができれば」と山口さん 流木や漂流物のビーサンなどをオブジェのようにディスプレイ
海抜ゼロを体験する シーカヤックの魅力
『赤穂里うみカヤックス』では、カヤックやSUPなど、さまざまなマリンアクティビティの体験の場を提供していく予定。なかでもカヤックは、赤穂にぴったりの海遊びだという。赤穂の海は外海に比べて波が穏やか、水上散歩にもってこいのロケーションだからだ。潮の流れも風もほとんど関係なくスイスイと移動できる。遠浅で干潮時の水深は60㎝、ビギナーがひっくりかえっても安心なことも高ポイントだ。
山口さんが「ジェットスキーやヨットは海面からちょっと離れた感じでしょ。その点、カヤックは海と一体感がある。海がすごく面白いと理屈を超えて理解できる。海岸線から見た海やクルマを走らせながら見る海とは視点がまったく変わるよね」と話すと、「海抜ゼロの世界を体感できるのが魅力。海の上を滑っていくような感覚はなかなか体験できない」と清水さんも大きくうなずく。
「穏やかな湾内は初めてカヤックをする人にもチャレンジしやすい環境です。またちょっと沖に出れば、風を感じる大海原を楽しめます」とはウィンドサーフィン歴の長い上山さん。
坂越湾周辺を2人でカヤッキング中、スナメリの親子が近づいてきたそう。彼らの息づかいまで感じられるのは静寂の乗り物カヤックならでは 色とりどりのカヤックを見ているだけでココロ踊る
海からの目線で気が付くこと
海から眺めれば、陸地の景色も違って見える。
「海から見た巨大カルデラ跡の赤穂コールドロンほか、春は赤穂御崎の桜もきれいですよ。海沿いの遊歩道からも見ることができますが、海から全体を見るのではスケール感が違います」と清水さんはサクラの時期に乗った動画を見せながら説明してくれる。
『赤穂コールドロン』とは、赤穂御崎の海岸沿いに見ることができるむきだしの岩体のこと。恐竜が生息していた後期白亜紀時代の巨大噴火でできたカルデラを海面から臨む。カヤックだからこそ楽しめる、ダイナミックな自然美と言えるだろう。ほかにも大避神社の神域として古代から人の出入りを禁止されている生島周辺もおすすめ。山桜をくぐり抜けると鳥居が出迎えてくれる日本的な情景と出会えるそう。
「海と一体化できるカヤックでは、ゴミの漂流にも気づかざるを得ない。そこから海をキレイにしたいという気持ちがもっと強まっていけばいいなと願っています」と山口さんは体験を通じて、海洋環境を守る大切さを伝える機会を創出したいと話す。
赤穂御崎に咲くサクラも、海側から見ると山から見下ろすのとはまた違った趣が味わえる 原生林が生い茂る生島。山桜を頭上に見上げながらのカヤッキング 水平線に沈んでゆく夕日を鑑賞。瀬戸内の穏やかな海を満喫できる至福の時
波音をBGMにビーチヨガでリラックス
マインドフルネスヨガの一人者・高田恭子さんは、ビーチヨガやSUPヨガのインストラクターとして活動に参加する。「赤穂で生まれ育った私にとって、赤穂の海は子どもの頃から釣りや貝堀、海水浴と、暮らしの中で関わることが当たり前の存在でした。メンバーに加わったことで素晴らしい海辺のまちに住んでいるのだと改めて実感、赤穂の海の魅力をもっと多くの方に体験してほしいと考えています」。
赤穂の海岸で行うビーチヨガは、室内で行うヨガと違って、海からの風、波の音、太陽の光、砂の暖かさなど、自然をそのまま五感で感じられる。細かいことを気にせずに波のリズムとシンクロしてゆっくりと呼吸すれば、心身を芯からリラックスさせることができるそう。
「寄せてはひく自然のリズムを刻む波の音とあわせて行うビーチヨガでは、自分の素のココロと向き合う時間を持つことができます。ヨガをしたことがない人、また室内のヨガしか知らない人、もちろん男性の方もぜひ、ビーチヨガを体験してほしいですね」。
今後、新しくSUPヨガもスタート予定。海の上で行うSUPヨガは波の揺れが気持ちよく、寝てしまう人もいるとか。あえてザブンと海に落ちるのもまた楽しい。静かに凪いだ海景色が広がる赤穂で自然のエネルギーを感じるひとときになりそうだ。
ayur yoga 代表の高田恭子さん。パーソナルレッスンをはじめ、赤穂の市民体育館のヨガ教室、明王山 普門寺での瞑想会ヨガなど、開催するヨガイベントはいつも大盛況 唐船の砂浜で開催したビーチヨガ。コロナ禍の今だから、広々とした砂浜で心地いい時間を過ごしたい 砂の感触、潮風、暖かな陽光を全身に感じながら 終わったあとは皆「気持ちよかった~」と笑顔に 「日常から離れてヨガマットの上でつくる自分だけの時間。海が発するマイナスイオンを取り入れてリフレッシュできます」と高田さん
アマモ場の保全と再生活動
坂越湾や唐船海岸、御崎地区には昔から自生のアマモ藻塲が形成されていたが近年、藻場の部分的な劣化が指摘されている。清水さんは10年前から始めたアマモ場の再生活動を『赤穂里うみカヤックス』でも引き続いて取り組んでいる。自生している場所からアマモの種を採取し、アマモの少ない干潟に移植。小魚やプランクトンの住処となるアマモは、「海のゆりかご」と呼ばれる大切な海藻。アマモ場を増やし、海の環境、生態系の保全・改善をめざす。
「子どもの頃は海に入ると、足に絡まるほど生えていたアマモが今は探さないと見つからなくなってしまった」と清水さん。
山口さんも「豊かな環境に戻し、クルマエビやカブトガニが戻ってくるような自然を取り戻すことが目標」と意気込みを語る。
海の現状や海洋の役割と環境問題などを多面的な視点から学べるよう、アマモ場の再生活動には、地元の子ども達にも参加してもらっている
みんなのふるさと、“里海”を交流の場に
里海では、生命の母となる、ふるさとの海に人の手が加わって、独自の自然が維持されている。清水さんは「山も川も海も全てがつながり、山々の栄養が川を通して海に流れ、海の栄養となる独特の自然環境を醸し出している赤穂。美味しい牡蛎が育つのも豊かな自然があるからです。美しい自然が残る赤穂の魅力を保ち、広く伝えていきたいと思います」。
「若い人達にもっと赤穂の魅力を知ってもらって、住んでみたいと思ってもらうことが理想。一度赤穂から出ていってもUターンしてほしいし、他府県からの移住者も増えてほしい。海を軸とした交流が成功すれば、雇用も増やすこともできる。僕達の楽しみだけで終わらせてはいけないと考えています」と山口さんは赤穂の未来への想いを語る。
人が集まり、海のことを考え、その恵みを受けて、豊かな時間を過ごす。『赤穂里うみカヤックス』は、赤穂の海を、より身近に感じられる、素敵な交流の場をつくりだしてくれそうだ。
アマモを活かした里海づくりが推進される千種川河口から赤穂海岸
Sustainable
美しい赤穂の海をサステナブル
地元の海をクリーンに美しく。『赤穂里うみカヤックス』では、日々の自主的な海岸の掃除をはじめ、「里うみクリーンプロジェクト」という一般の方も参加する海岸清掃(ビーチクリーン)を定期的に実施している。約1時間かけて、唐船サンビーチなど沿岸に漂着するプラスチックゴミや家庭ゴミを拾う活動。毎回、環境学習やボランティア活動の一環として、地元高校生や大学生も参加し、総勢30名ほどで掃除を行う。次世代へ美しい海を引き継ぐために、「海」を介して人と人とがつながっている。地元民の赤穂の海に対する愛情の深さがわかる。
誰かが捨てなければ、海にゴミは存在しないはず 「里うみクリーンプロジェクト」。町も山も川も海とつながっていると想像することが大切
基本データ
●NPO法人赤穂里うみカヤックス
事務局:兵庫県赤穂市板屋町216
クラブハウス:兵庫県赤穂市御崎字唐船字ウツロ
TEL 0791-43-5987(事務所)
Webサイト:https://www.ako-kayaks.org/
※シーカヤック・SUP体験については、現在、申し込み受付はしておりません。(令和4年8月時点)
見習いR.O.
若輩者ですが、頑張ります👍